キミの世界で一番嫌いな人。
「つーかお前、その顔どうした」
「…え?」
「馬鹿みたいに腫れてるだろこれ」
スッと伸ばされた手は、私の左側の額から頬にかけて触れられた。
カランッと、メロンソーダの氷が溶けてしまった音がする。
窓ガラスに反射したふたつの姿。
片方は手を伸ばして、伸ばされた側は硬直。
「自分の見舞いをしろよ」
呆れた笑い顔に、ハッと意識が戻った。
あぁ、そうだ。
先日アッキーのボールを顔面キャッチしたんだった。
「来週の体育祭の練習で…クラスマッチの」
「あー、確かサッカーだっけ」
「先輩も出るんですか…?」
スッと離れてしまった名残惜しさ。
テーブルに乗ったハンバーグをチラッと見つめて、「冷めるぞ」と言ってから続けた先輩。
「…俺は毎年でない。そういうの、できねぇし」
やっぱりこの人は、あのときの少年なのだと。
麻酔が効く寸前、同じように手術台に眠る男の子がいた。
この人が私に心臓をくれるんだ…って、幼いながらにも思ったりして。
コーちゃん、やっぱりわからないよ。
謝罪の先が、わからない。