キミの世界で一番嫌いな人。




「じゃあ…騎馬戦とかリレーとかも…?」


「あぁ。長時間走れないからな」



知ってるよ。

風邪だとしても命取りになるんだよね。

すぐに点滴が必要になる。
それで、激しく動くと苦しくなる。


薬は必ず3種類、毎日飲まなきゃだめ。



「先輩って、…嘘、下手ですよね」



だってお見舞いって言ってたのに。

それじゃあ自分からバラしてきてるようなものだ。


その代わり、私はどうやら嘘が上手みたいで。



「俺、サッカーはMF(ミッドフィルダー)を任されてるんです。それで騎馬戦は担がれ役で」


「不安でしかねぇわ」



はっと笑う先輩に切なくなって、私はハンバーグを一切れ口に運んだ。

少し冷めてしまったデミグラスソースの風味がじゅわっと広がって、ご飯をかき込む。

水をグビッと飲んでから、窓に反射する先輩を見つめた。



「俺が先輩のぶんまで走ります!必ずサッカーも騎馬戦も1位獲ります!だから、見ていてください」



キミに救われた命。

私は走れるようになったよ、苦しくもならないんだよ。

ありがとう、先輩。


でも───…ごめんなさい。








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