キミの世界で一番嫌いな人。
理久side




「わっ!」


「馬鹿、ちゃんとボール見ろって」


「あれっ?なんで!?」



わりと弱めにパスしているはずなのに、そいつはスコッと空ぶっては転ぶ。

暗闇だからとか、あまり見えないからとか、そんな理由じゃない。


絶望的に運動音痴が過ぎる。



「つま先じゃなくて側面で蹴ろって。そのやり方だと突き指する」



なにがMFだよ。なにが1位獲る、だよ。
お前よく言えたな本当に。


病院帰りの公園。

電車とバスに乗って地元へ戻ったものの、そいつは1人で練習するとか言って、人の気配のない公園へ歩いて行くものだから。

なにをマジになってんのか知らねぇが。


ここらは柄の悪いチンピラしかいない。

絡まれたなら確実にボコられるオチが待ってる。



「あっ!今のパス良かったよね先輩!!」


「蹴れただけだろ。スピードが無さすぎる」



どういうわけか俺も付き合ってやってる今。


……なにしてんだ俺。

こんな男の護衛のつもりか。
こいつを心配してんのかよ、俺は。

は?まじ気持ちわりぃ…。



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