キミの世界で一番嫌いな人。
気づけば運良くボールを手にした小鳥遊。
おぼつかないドリブルで、ゴール一直線に走ってゆく。
思わず俺は木から身体を離してまで見つめた。
「……、」
走ってる姿を、なぜか目でずっと追ってしまう。
幸せそうに走っているそいつは、嬉しいはずなのにどこか泣きそうで。
これは俺の勝手な解釈にすぎないが。
「ごめんなさい」と、誰かに謝ってるみたいだった。
「行けぇぇ小鳥遊!!!」
行ける、そのまま走れ。
確かにすげぇ下手だけど。
今にも奪われそうだし、つーか足おせぇ。
本当に女って言っても違和感ない。
肌も白いし、いつも隣を歩かれるたびにふわっと髪から香るシャンプーの香りが落ち着かなくて。
……なんて、なに思ってんだ俺。
「チビ!!俺にパスしろって!おまえ絶対かわせないから!」
「嫌だ!!だって俺っ、アッキーと友達になりたいから…!!」
「…ほんと、熱血馬鹿」
廣瀬 秋斗───この湊川で俺と並ぶくらい有名な男。
チビって、確かにチビだけど。
お前そう呼ばれてんのかよ…。
友達……。
あいつ、確かまだ1人もいないんだっけか。
「うわぁ…っ!」
だけど小石に躓いたそいつは、教科書どおりに転けやがった。
スコーンっと、音が鳴ったんじゃねぇのってくらいに。