キミの世界で一番嫌いな人。
「おーいチビー、息してるー?」
「おう…っ!全然だいじょーぶっ!!」
砂だらけのなか、歯を食い縛りながらも立ち上がった。
まだボールは足元に転がっていて、幸いにも取られることは無かった。
そのまま再びゴールめがけて走ってゆく。
「お前みたいな奴にはなあ…、ちっと厳しさを教えなきゃあ駄目なんだよな」
「───…え…?」
ゴールキーパーと1対1。
PKのような形になったとき。
どういうつもりかキーパーはゴールから離れて、そいつに向かったと思いきや。
「なっ…!!う”っ…!!」
後輩の腹へと、容赦なく蹴りをお見舞い。
ドサッと地面にうずくまる小鳥遊 青葉。
コロコロと転がったボール、キーパーは軽々奪ってはグラウンド外へ放り投げた。
「なにしてんだてめえ…っ!!」
「馬鹿じゃねぇの!!行儀良くサッカーなんかするわけねーだろ!!」
あとはまぁ、案の定だ。
視界が見えなくなるくらいの砂埃。
一歩、また一歩とゆっくり、けれどすぐ駆けつけるつもりで俺は向かう。
珍しい顔が自分から来たと分かれば、生徒たちはざわついた。
「藤城…ッ、」
「…邪魔」
「っ…、」
こんな不良だらけのなかでうずくまるそいつは、やっぱり男には見えなかった。
*