キミの世界で一番嫌いな人。
episode.1

最悪な再会





紺色のブレザーは少し大きめ。
でも着慣れれば違和感は無くなるはず。

赤いネクタイ、グレーのズボン。


仕上げはローファーに、顔周りで切り揃えた黒髪をナチュラルにセットする。



「よしっ!」



今日から男だ、私は。
口調も少し乱暴だって許される。

一人称は“俺”か“僕”で数時間迷った結果、ナメられないためにと“俺”にした。



「ごめんねお母さん。あなたの娘は少しのあいだ息子になっちゃうけど…」



写真しか知らない母親の仏壇の前、手を合わせるのが毎日の日課だった。

小さい頃は日々の出来事を話したりしていたけど、返事すら返ってこないとわかった瞬間そんなものはやめた。


父親は滅多に帰ってはこない。

帰ってきても大切な書類を持ちにきたり、日々の生活費を置きにきたり、それだけ。


毎日自分で食事を作って、もはや一人暮らし化しているそんな今日。



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