キミの世界で一番嫌いな人。
そう、さっきの騎馬戦で。
かすった程度だからそこまでひどいパンチじゃなかったとしても、少しだけ頬はヒリヒリと腫れていた。
これくらいなら大丈夫って思って忘れてた一撃。
それもまた手際よく湿布を貼られると、くいっと流れでジャージを指図してくる顎。
「いや本当に大丈夫ですってっ!!」
「…男のくせに何恥ずかしがってんだよ」
「そ、そりゃそうなんですけど…っ!」
ぜったい駄目だ。
脱いだりなんかすれば、胸潰しとして巻いているサラシがバレる。
それに腹筋だってついてないし、そろそろつけなきゃかなぁとも思っている最近だし…。
こうなるなら、もっと早くにバキバキにしておくんだった…。
「いだだだだ…!」
「馬鹿、動くと余計負担かかるっつってんだろ。いーから早く脱げって。
無理やり脱がせるなんかしたくねぇんだよ俺も」
「っ……、」
ちがう、手術跡が見つかってしまうから。
胸の場所にある、みみず腫のような傷。
きっとそれは先輩も同じはずで。
「チビー、大丈夫?」
ガラガラガラと、ドアの先から現れたアッキー。
今さらだけど自分の中だけで呼びつづけているあだ名。
「どーも、藤城サン。…お久しぶり」
「…どうも」