キミの世界で一番嫌いな人。




涙は蛇口を閉められた水道のように、ピタリと止まってしまった。

沈黙の重さを初めて体感する。


だってアッキー、笑ってないから。



「俺、前に言っただろ?誰かを負かせる強さは恨みや憎しみからしか来ないって」



うん、言ってた。

正直あれを聞いたときは意味わからなかった。

なに言ってんだこいつ?って、思った。


けど、今なら少し分かっちゃうような気がする。



「そう考えたら、俺はもしかすると藤城サンより強いかもね」



アッキー言葉は、先輩限定な気がした。


恨んでるってこと……?
あなたは先輩を。

似た者同士だね、私たちはみんな。



「じゃあね、お大事に」


「うぐっ…!!」


「よし大丈夫。折れてない」



せっかく落ち着いてきた同じ場所に、まさかのパンチを入れられる。


今ので折れたよ確実に…っ!!

怪我を悪化させるって、どういう神経してんの…!?



「まってアッキー…っ!俺と、友達に…」


「もっと腹筋つけなよチビ。そんなひ弱じゃ俺のトモダチにはなれないよ」


「えっ!じゃあ腹筋つけるよ…!!」


「頑張ってねー」



私やっぱりアッキーのこと、もっと知りたい。

先輩のことだって、まだ分からないことがたくさんあるから。


でもふたりとも、今まででいちばん優しい顔してたの知ってた…?



< 64 / 340 >

この作品をシェア

pagetop