キミの世界で一番嫌いな人。
「ねぇ明日の花火大会、浴衣で行こうね!」
「ええ、面倒だよ。あたし普通にTシャツショーパンのつもりだったんだけど」
「なにそれつまんな~い!そんなんだから彼氏できないのよ!」
すれ違う女の子の会話ですら暑い。
早くクーラー、クーラー、呪文のように唱える。
そもそも私の格好が暑いのだ。
ショートパンツを履くわけにもいかないし、薄手のTシャツも透けたらやばいから駄目。
「浴衣かあ。…今年は無理そうだなぁ」
ダボッとした大きめの七分丈パーカーに、黒のサルエルパンツ。
極めつけはスニーカー。
一応は男の子に見えてるはずだ。
「あっ、おばあちゃん?うん!元気元気!」
家に到着するなり、祖母からの電話。
田舎に暮らす祖母はパワフルなおばあちゃんで、いつも私を気にかけてくれる。
彼女は母のお母さん。
昔から彼女に母の話をたくさん聞いたものだった。
私は母によく似ていると言われる。
今は男の子になってるよ、なんて伝えれば腰を抜かしちゃうんだろうな…。