キミの世界で一番嫌いな人。
「え~、浴衣?やだよ面倒だし…」
去年だったか、祖母が送ってくれた浴衣はクローゼットにしまってある。
そんな写真を送れと言われてしまった。
自分で着付けはできるから問題ないとしても、そもそも髪型が男の子だ。
「…わかったよー。明日送るね。今日はもうバテちゃって無理…」
若いのになに言ってるの!と、スマホ越しのため息。
その言葉は本日2回目。
「…なんかひっさしぶりな感じ」
そして翌日の涼しくなってきた夕方。
金魚が水面から跳ねている絵柄、青色をし
た浴衣と赤い帯。
鏡に映る自分の姿に、ちょっとだけ懐かしく思った。
「ちょっとやりすぎ…?」
ショートヘアではなく、垂れ下がる長いロングヘアにまでなってしまって。
髪飾りまでつけて、確実に女の子。
これは前の学校で文化祭のときに使ったもので、それぞれ生徒が装飾品を持ち帰ったんだっけ。
そのウィッグを見つけてしまって今。
「でも、本当にこれくらい伸ばしてたんだよね…」