キミの世界で一番嫌いな人。




「長い髪きれいね」なんて、看護師さんからいつも言われて。

ずっと願掛けのように伸ばしていたから、いつの間にか腰に届きそうなくらいまで伸びて。


でもここに来て、バッサリとショートに切り揃えた。



「よし、おばあちゃんに送信完了っと。……お祭り行ってみようかな、」



下駄もあるし、暇だし。
この町をまだ知れてないし。

ふだん男だから、夏休みの今くらい許される…?


それに人も多いらしいから、どうせウィッグも被ってるしバレやしない……よね。



「なぁ、あの子可愛くね?」


「俺も思った!見ない顔じゃね?」



結局みんなにそう言うの。

男子校で生活してればわかる。
女を見れば“可愛い”しか言わないって。


女=天使にでもなってるんだ。

ほんっとーに馬鹿な脳内だ。



「おじさんイチゴ味ひとつ!」


「あいよ!ねーちゃん綺麗だからシロップたくさんかけとくわ!」


「ありがとう!」



わりと楽しかった。

友達とわいわい、きゃあきゃあ、そんなものは無かったとしても。



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