九羊の一毛
どこまでも中途半端を許さない彼女は、そう促してくる。
ここまでくると恥ずかしさや緊張感なんて、今更だった。とっくにバレてるし、なんならさっき大声で叫んじゃったし、顔面コンディション最悪だし。
「俺っ、西本さん、が、好きでっ」
「……うん」
「ほんとの、ほんとに好きで……!」
今度は惨めすぎて涙が出てきた。
何だこれ。何だこの状況。何で道端で公開告白してんだ俺は。
「うん」
それでも、目の前で少し困ったように笑いながら頷く彼女が。拙い俺の告白を、結局きちんと聞いてくれようとしてくれている彼女が。
「西本さんが、好きです……」
濡れた頬を粗雑に拭って、震える声で告げる。
彼女はとうとう吹き出して、「堂々巡りだね」と肩を揺らした。
「ひどっ、俺、真剣に言ってんのに、」
「うん、ごめんごめん。よくできました」
「馬鹿にしてるじゃん……」
口を尖らせる俺に、「返事は?」と彼女は首を傾げる。
「返事、聞かなくていいの?」
いや、もういいよ。てか振られるじゃん。
既にライフゼロのところに、とどめを刺す気なのか。目を逸らしていると、突然両頬を挟まれた。
「ぶへっ、」
「あはは。イケメンが台無しだねえ」