九羊の一毛
*
「あ、お風呂ありがとう……」
テレビを眺めていた彼に、控えめに声を掛ける。
玄くんはつと視線を上げてこちらを向いた後、すぐに逸らして頷いた。
「じゃあ俺も入ってくるね」
「あ、うん……」
ぱたん、とドアが閉まったのを確認して、私はその場にしゃがみ込んだ。
「はあ~~~~……」
分からない、こういう時にどんな顔していいのかが全然分からない!
意識しすぎるのも良くないと思うけれど、そんなこと言ったって無理だ。ずっと家に二人きりだし、当たり前だけどそこら辺ぜんぶ玄くんの匂いだし、もうわけわかんなくなっちゃいそう。
緩慢に立ち上がって、ソファに腰を下ろす。テレビをぼーっと流し見しながら、チャンネルを頻繁に変えながら。
何分経った頃だろうか。ちょうど時間の切れ目でどこをかけてもCM、つまらないなと思っていると、浴室の扉が開く音が聞こえた。
咄嗟に膝を抱えて顔を埋める。どんな顔をすればいいか、の答えは、まだ出せていなかった。
部屋の奥でドアが開いて、足音が近付いてくる。テレビの音が虚しく響いていた。
「寝ちゃった?」
突然耳元で聞こえた声。びく、と反射的に肩が跳ねる。
「あ、良かった。起きてた」
「あ、お風呂ありがとう……」
テレビを眺めていた彼に、控えめに声を掛ける。
玄くんはつと視線を上げてこちらを向いた後、すぐに逸らして頷いた。
「じゃあ俺も入ってくるね」
「あ、うん……」
ぱたん、とドアが閉まったのを確認して、私はその場にしゃがみ込んだ。
「はあ~~~~……」
分からない、こういう時にどんな顔していいのかが全然分からない!
意識しすぎるのも良くないと思うけれど、そんなこと言ったって無理だ。ずっと家に二人きりだし、当たり前だけどそこら辺ぜんぶ玄くんの匂いだし、もうわけわかんなくなっちゃいそう。
緩慢に立ち上がって、ソファに腰を下ろす。テレビをぼーっと流し見しながら、チャンネルを頻繁に変えながら。
何分経った頃だろうか。ちょうど時間の切れ目でどこをかけてもCM、つまらないなと思っていると、浴室の扉が開く音が聞こえた。
咄嗟に膝を抱えて顔を埋める。どんな顔をすればいいか、の答えは、まだ出せていなかった。
部屋の奥でドアが開いて、足音が近付いてくる。テレビの音が虚しく響いていた。
「寝ちゃった?」
突然耳元で聞こえた声。びく、と反射的に肩が跳ねる。
「あ、良かった。起きてた」