九羊の一毛
珍しく驚いた様子で、少し弱気に問うてくる彼女。当たり前だけれど、やっぱり女の子だなあって思う。
私は力強く頷いて、その不安げな表情に笑いかけた。
「カナちゃんに、あげたいの」
私の言葉に、彼女は目を見開いて。そっとブーケを掴むと、目を閉じて噛み締めるように微笑んだ。
「……うん。ありがとう」
そんなカナちゃんの華奢な手の上、津山くんが自分の両手を重ねる。
彼女の瞳が開いて、彼の姿を捉えた。
「絶対、幸せにする」
真っ直ぐ、強い意志がこもった誓い。それでもちょっぴり泣きそうになっているのが、津山くんらしかった。
「馬鹿だなあ、岬は」
「ばっ、馬鹿って……」
カナちゃんの発言に、津山くんが慌てふためく。
彼女は顔を上げると、柔らかな笑みを浮かべて言った。
「二人で幸せになるんだよ、こういうのは」
ず、と鼻を啜る音がする。津山くんの涙腺が、限界みたいだ。
「カナちゃんと津山くんも、大概だよ」
揶揄うように私が言えば、照れ臭そうに二人は肩を揺らした。