九羊の一毛
*
翌日、金曜日。今日は狼谷くんに勉強を教えてもらう日だ。
放課後、図書室で向かい合って座っていると、「ちょっと飲み物買ってくる」と彼が立ち上がった。
数学の練習問題を数題解き終えて、ちょうどキリがいい。私も少し休憩しよう、と体を伸ばした。
椅子に脱力して、なんとはなしに周りを見渡す。
貸出カウンターに座る図書委員の人が、退屈そうに窓の外を眺めていた。
私もつられて物思いにふける。
『俺のこといっぱい見て。俺のこと沢山知ってよ』
うっかり昨日の彼のセリフを思い出してしまって、頭を抱えた。
いやいや、狼谷くんは決して変な意味で言ったわけじゃない。そうじゃなくて、自信を持てないから、そうして欲しいと言っているわけであって。
狼谷くんの、いいところ。
机の上に無造作に投げ出していたシャーペンを握る。ノートの空白に一つ小さな点を書いてから、文字を並べた。また一つ、もう一つと箇条書きで連ねていく。
授業中、眠たくなったら誤魔化さないで素直に寝ちゃうところ。
話を聞く時、耳を寄せてくれるところ。
それから――
「……それ、俺のこと?」
「ひあっ」
翌日、金曜日。今日は狼谷くんに勉強を教えてもらう日だ。
放課後、図書室で向かい合って座っていると、「ちょっと飲み物買ってくる」と彼が立ち上がった。
数学の練習問題を数題解き終えて、ちょうどキリがいい。私も少し休憩しよう、と体を伸ばした。
椅子に脱力して、なんとはなしに周りを見渡す。
貸出カウンターに座る図書委員の人が、退屈そうに窓の外を眺めていた。
私もつられて物思いにふける。
『俺のこといっぱい見て。俺のこと沢山知ってよ』
うっかり昨日の彼のセリフを思い出してしまって、頭を抱えた。
いやいや、狼谷くんは決して変な意味で言ったわけじゃない。そうじゃなくて、自信を持てないから、そうして欲しいと言っているわけであって。
狼谷くんの、いいところ。
机の上に無造作に投げ出していたシャーペンを握る。ノートの空白に一つ小さな点を書いてから、文字を並べた。また一つ、もう一つと箇条書きで連ねていく。
授業中、眠たくなったら誤魔化さないで素直に寝ちゃうところ。
話を聞く時、耳を寄せてくれるところ。
それから――
「……それ、俺のこと?」
「ひあっ」