九羊の一毛



「狼谷くん、私ゲーム上手くないって! 下手くそって言ったよ!」

「うん、そうだね」


抗議する羊ちゃんに、淡々と返す。

学校の最寄り駅。そこに入っているゲームセンターの目の前まで来て、俺がなぜあんな質問をしたのか理解したらしい。彼女は若干不服そうに肩を落としていた。


「狼谷くん、このアニメ好き?」

「いや、知らないかな」

「じゃあこのキャラクター知ってる?」

「いや……」

「あ、お菓子の方がいい?」


UFOキャッチャ―の中の景品を指さし、羊ちゃんが次々に問いかけてくる。
あまり乗り気じゃなさそうに見えたが、何かやる気を出し始めたようだ。彼女は軽く腕まくりをすると、「よし」と拳を握る。


「取れたら狼谷くんにあげるね!」


どうやら俺へのプレゼントをまだ諦めていなかったらしい。彼女もなかなかに頑固だ。

大きいスナック菓子の台に決めたのか、羊ちゃんは百円玉を一枚投入してゲームを始める。


「あ、全然だめだ……久しぶりにやったなあ」

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