九羊の一毛
「今日は委員決めをしようと思う」
担任の森先生がそう言ったのは、始業式から一週間ほど経った日のことだった。
学級委員をやってくれる人はいないか、という問いかけに手を挙げたのは、黒髪の真面目そうな男子生徒だ。
「お、坂井やってくれるか。ありがとな。女子はどうだ? 誰かやってくれないか?」
「じゃあ私やります!」
はつらつとした声が上がる。
名乗りを上げたのは九栗で、彼女は去年も学級委員を務めていた。
「すぐ決まって助かった。じゃあ他の委員は、学級委員の二人を中心に決めてくれ」
そう告げられ、男子は坂井、女子は九栗が指揮を執ることになった。
体育委員、図書委員、と徐々に決まっていく中、なかなか埋まらない枠が二つ。
「えーと、保健委員やってくれる人いないかな?」
坂井が促した。
そこまで大変でもない保健委員だが、みんなそれぞれやりたくない事情でもあるのか、手は挙がらない。
「じゃ、俺やるわ」