九羊の一毛


久々にあんなうなされたよ、と冗談めかして付け加えた彼は、眉尻を下げる。


「あの時、実はめっちゃ具合悪くて。金曜日、無視しちゃってごめんね」

「全然! 気にしてないよ……!」


気にしてない、というのは嘘だけれど。いや、理由を聞いた今は本当に気にしていない。ただこの一週間、私のせいだったらどうしようとかなり気を病んだ。

それにしたって、一週間寝込むほどの風邪とは。
私は昔から体は丈夫な方で、風邪も数えるくらいしか引いたことがない。小学生の時に隣の子がインフルエンザになったけれど、私はかからずに二個隣の子がかかったと言って休んでいたくらいだ。


「病み上がりなのにこんな雨の中走ってきたの? ぶり返しちゃうんじゃない……?」


何にせよ、それが一番の懸念点だった。
委員会に出ようという心意気はとても素晴らしいと思う。思うけれど、何も体に鞭を打たなくても、と少々その熱意に圧倒されてしまった。

狼谷くんは私の言葉に目を細めると、刹那、柔らかい表情をしまって問うてくる。


「……そうなったら、羊ちゃん看病してくれる?」

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