九羊の一毛


曰く、告白を受けたのはさっきの子だけじゃなかったらしい。
言われてみれば確かに、ホームルーム後、彼を呼び出していたのはあの子ではなかった気がする。教室に戻らずバス停で待機していたところにさっきの子が現れて、あの状態に陥っていたというわけだ。


「ふーん。モテモテだね」


ていうかこの寒い中、外で待つって。しかもバス停に先回りって。ちょっと怖いんですけど。
私の端的な返答に、津山くんは焦ったように口を開いた。


「俺は……! 俺は、西本さんからモテればそれでいい……」


途中で恥ずかしくなったのか、彼はマフラーに口元を埋める。

なんだ、それ。無感動に胸中で受け流したのは許されて欲しかった。

だって津山くんは、私に向かって一度も「好き」と言ったことはない。思わせぶりというか、最早それでしかないんだろうなという言動は沢山あったけれど、告白なんてされていないのだ。

態度から察しろ、といわれようものなら、速攻縁を切る。
知るか。言葉にしなきゃ伝わらない。いや伝わってはいるけど、そういうことじゃなくて。

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