九羊の一毛
「羊、私のにも書いて!」
「うん、私のも書いてくれる?」
「もちろん~」
朱南ちゃんと卒業アルバムを交換してペンを握る。
クラスのみんながいつもより早く登校してきて、こうやってお互いにアルバムの余白にメッセージを書き合っていた。
きゅ、と油性ペンが滑る感覚と、インクの匂い。
朱南ちゃんへのメッセージは、他の子よりも随分と長くなってしまった。三年生になってから、カナちゃんともあかりちゃんともクラスは離れてしまったけれど、朱南ちゃんと同じクラスになって、この一年間、私は彼女と過ごすことがほとんどで。
もちろんというべきか、玄くんともクラスは離れてしまった。
それもそのはず、彼は国公立組、それも特に頭のいい人が多いクラスだ。私のクラスでは、彼の所属するクラスを密かに「修行クラス」と呼んでいた。休み時間、覗きに行っても、大体みんな自分の机で勉強している人が多いから。
「それにしても、ほんとあっという間だったねえ。全然実感わかない」
「ね。特に最後の方あんまりみんなと会えなかったし、余計に早かったなあ」