九羊の一毛


『羊ちゃーん……』

『ん?』

『明日さ、結果がどうでも……とりあえず、会いたい……』


合格発表日の後は気まずくなっちゃうから、軽率に友達と連絡を取れないってよく聞くけれど。彼に関しては遅かれ早かれ結果はお互い知ることになるし、それが明日であろうとどうってことはない。


『うん、そうだね。会おっか』


玄くんも第一志望の大学が県外だから、ネットで確認するらしい。
受かったら一人暮らしを始めると言っていた。私の方も県外ではあるけれど、電車で通える距離だ。

彼ももう、確認しただろうか。いや、きっとしただろう。

昨日はお互いに眠かったというのもあって、「会おう」という約束だけしたはいいものの、時間や場所は全く決めずに電話を終えてしまった。


「……よし」


かけちゃおう。うだうだ迷っているよりも、その方がいいに決まってる。……実をいうと、私が玄くんに早く会いたいだけなんだけれど。

一番上にある彼の連絡先。深く息を吐いて、通話ボタンをタップした。

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