九羊の一毛
先程とは打って変わって頼もしい励ましに、心が軽くなった。大きく頷いてから、一歩踏み出す。
正直、試験に関してはもう思い残すことはない。自分の限界までは頑張ったし、これで駄目なら仕方ないと思う。
受けると決めたのは最終的に自分だ。腹は括っていたつもりだった。
「ふー……」
人だかりの中、顔を上げる。
羅列されている数字に、上から下、上から下、と目を滑らせた。
まだ違う。もう一列隣か。
鼓動が高まっていく。瞬きもせず、食い入るように探して――
「あっ、」
た。あった。え? あった。
手元の受験番号を今一度確かめる。そしてまた掲示板と照らし合わせる作業を、多分三回はやった。
「はー……」
夢じゃない。ちゃんとある。
ぐ、と込み上がってきたものを抑えて、俯いた。目を閉じて十数秒。じわじわと嬉しさが広がっていく。
人だかりから抜けると、西本さんは道の端で電話をしていた。それを見て、ようやく俺も親に連絡しなければと思い至る。
父は仕事中だったためメッセージを入れておいて、母に電話を掛けると、なぜか泣きながらキレられた。俺が決めたことだったから口出ししなかったが、相当心配していたようだ。
「おめでとう」