深紅と浅葱



将軍 徳川家茂が上洛し
各藩大名などとの酒の席


「なんだ?無愛想な女だ」

慶喜とともに現れ隣に座る
髪を下ろし、紅い着物に身を包み
ほんのり化粧をしている
無表情の葵が注目を集める

「慶喜様、そのような娘が好みですか?我が娘も負けてませんよ?
今度、会ってもらえますか?」

慶喜に縁談を持ちかける者


「無愛想な女だ」

「気味悪い」


陰口を言う者


居心地の悪い葵をニヤリと笑う


「良くも悪くも今日の主役は、家茂殿ではなく、お前だな?ククッ」


楽しげに慶喜が言った


「楽しそうで何よりです」

「あぁ気分が良い
家茂殿に見せつけているんだから
逃したものがいかに良い存在か
返せと言いだしても
断ってやるさ クククッ」


「返せなどと、言いませんよ」




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