深紅と浅葱
酔いも冷めきり
吐いた息が白くなる

『葵斗と露子さん良い夫婦だなぁ』


昼間の2人を思い出す


背後に感じる気配に気づきつつ
月に目をやる

ふわりと後ろから抱きしめられたことを認識する


「夫婦とは、良いものだな」


慶喜の声が近く左の耳に唇があたる


葵に見えない場所で護衛の一葵が
慶喜の行動に顔を赤くする


「俺と夫婦になるか?」


とんでもない瞬間に出会したと
一葵が両手で口を押さえる

慶喜が葵の横に座りながら
葵の肩をくるりと回す
向かい合わせになる


「クククククッどんな表情かと思えば
変わらんな!ハッハッハッ」

「御正室様に文でも出されたらいかがですか?」

「そうしよう」

警戒され、拒絶されなかったこと
いつも通りの葵に安堵し
思わず笑ってしまい
自らの行為を戯れとした

〝この顔で良かった〟と葵が言っていたことを思い出し、確かめたくなる

内心は、どうだろうか

少しだけでも胸が高鳴っていたらいいなと


慶喜は、葵に微笑む


「なんですか?」


『コイツ…なんとも想ってないな』


「寝るぞ!」



ふて寝することにした






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