深紅と浅葱
「……気持ちは、かわりませんよ」

土方の文は、葵を心配する気持ちが綴られていた
そして、新選組に帰ってこいと力強く誘う内容だった
言葉で誘われるのと違い
心に深く入り、気持ちを揺らがせていた


「土方さん…私…
慶喜様を守りたいんです
新選組の皆さんみたいにたくさんの人を守ることは、私にはできません
沖田さんが近藤さんに救われたように、私も慶喜様に救われたんです
やるべきこともあります
だから…」

「俺はこれからも誘う」

「…」

「慶喜様を守ることは、俺達の仕事でもある
女中やりながら両立してただろ?
やるべきことが何かは知らねぇが
そっちの都合もつけてやる
会津公のところで小耳にはさんだんだが、お前ら解散するらしいな
一葵や他の奴らも受け入れる」

「一葵や皆が新選組に行っても
私は、いきません
すみません」

深々と頭を下げる葵の肩を押し起こす


「葵斗みてぇに堅苦しいことすんな
気楽に待つさ」



そう言って土方がにこりと笑った


なぜ何度も誘われるのか理解ができなかった

ペコリと頭を下げ、土方に背を向けた



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