深紅と浅葱
~梅雨~
雨音に耳を塞ぎたくなるほど
朝から激しく降り続いていた日
葵は廊下で立ち止まると天井を凝視した
天井との睨み合い
「よう」
声を掛けてきた土方に視線を移す
「そんなところで何してる」
「何って、見てただけです」
天井を指さした葵が、そこに何の気配もしなくなったことに気づく
「何かいたのか?」
葵の視線が土方を伺う
『土方さんは知っている
土方さんの知り合いなら、知らぬふりをしよう』
「そこだけ雨音が変だなと思ったので
雨漏りしているのかと」
「そうか 後で屋根裏見させよう」
「ええ 雨漏りしていたら大変です」
ぺこりとお辞儀して葵が去る
『気づかれたかと思った…』
胸をなで下ろす