深紅と浅葱
仕事が始まれば、休みなどない
だから今、ゴロゴロし、遊び
気を紛らわしていたのかと
歩きながら考える


ふと周りを見る



『ここは… どこだ?』



人に道を覚えるように言っておきながら、自分が迷ってしまったと
小さくため息



誰かに道を訪ねたいが人気がない


いつの間にか雨も上がっている

今度は自分自身に腹が立ち、イライラする



『兎に角、戻ろう』



傘をたたみ、踵を返すと



『良いにおいだ…』


においに釣られ店の扉を開ける

「すみません
今日は、もう店閉めてるんですよ」

言われて店の机を見れば暖簾

余裕のなさすぎる自分が嫌になる

「こちらこそすみません
良いにおいに釣られてしまって」

ガックリしている山南に

「明日の仕込み中なんですけど
味見してくれますか?」


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