深紅と浅葱
帰り際


「俺… 葵を守りたい」


土方が目を開く

沖田がこのように真っ直ぐに気持ちを言葉にすることが珍しいからだ



「嬉しいです」



2人がお似合いだと、土方がニヤける


「葵 すまねぇが
5日後の宴、屯所でやるから
料理手伝ってくれねぇか?」

「5日後ですね 承知しました」



2人が店を出てから

葵が顔を歪めた

嬉しいと言葉に出来ても変わらないこの顔が情けなく思えた

『新選組も私の仕事を知れば
私を避けるようになるのかな…』


信じたいのに信じられない
もどかしさに、涙が頬を伝う



ガラッ



葵が慌てて涙を拭く

「忘れ物ですか? っん!!」



驚き涙が止まる


「泣いてる気がして…戻ってきた…
俺が守ってやるから!泣くな!
いいな!? 1人で泣くな!!!」



「は…はぃ…」




沖田の後ろにそっぽ向いた土方がいた


「じゃあな!!!」

「はい」


慌ただしく出て行った沖田が開けたままの扉を閉め

唇に触れる



『また…勝手に口づけされた///』








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