深紅と浅葱
「良いんですか!?」

「ええ どうぞ」


出された煮物をペロリと完食


「とても美味しかった
男所帯ではなかなかこのように美味しい物にはありつけない
本当に美味しかった」


「それはなによりです」


「お世辞ではないですよ」


「ええ 喜んでいただけて
私も嬉しいです」


と、言うわりに無表情な娘に

「喜んでます?」


恐る恐る聞いてみた


「すみません
この顔、変わらないんです」


「そうでしたか
失礼しました」


全く変わらない娘の顔をジッと見る



「気味悪いですか?」

「いやいや、美人なのになぁって」

「気を遣わなくて結構ですよ
それより、そろそろここを出たいのですが」

「おぉこれは、長居して申し訳ない」

慌てて店を出て名前を聞きそびれたことに気づく

忙しいところを邪魔するのも気が引けて、帰ることにした



『明日、近藤さんを連れてこよう』








< 9 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop