疑心暗鬼〜特殊捜査チーム「零」〜
次に部屋に入って来たのは、高校生で息子の慎吾(しんご)だった。派手な由起子とは違い、白いシンプルなシャツにジーンズというお金持ちのお坊ちゃんという雰囲気は全くない格好をしている。
「……父のことを調べているんですよね?僕は何も知りませんよ、あの人が勝手に恨まれて殺されたんだから」
緊張している素振りを全く見せず、慎吾はソファに腰掛けた刹那にポケットからスマホを取り出していじり始めた。その袖口についた汚れや微かな匂いを嗅ぎ、悠真は「絵の具?」と呟く。慎吾はゆっくりと顔を上げた。
「絵を描くのが趣味なんです。芸術作品を見るのも好きで……。お二人は好きな芸術家はいらっしゃるんですか?」
慎吾はどこか嬉しそうに訊ねる。しかし、悠真は芸術作品などあまりよくわからない。すると範人が口を開いた。
「俺と彼はシャガールの大ファンなんだ。特に「愛しのベラ」という作品を見ていると、こんな風に誰かを心から愛せたらと思うよ。ね?」
「……父のことを調べているんですよね?僕は何も知りませんよ、あの人が勝手に恨まれて殺されたんだから」
緊張している素振りを全く見せず、慎吾はソファに腰掛けた刹那にポケットからスマホを取り出していじり始めた。その袖口についた汚れや微かな匂いを嗅ぎ、悠真は「絵の具?」と呟く。慎吾はゆっくりと顔を上げた。
「絵を描くのが趣味なんです。芸術作品を見るのも好きで……。お二人は好きな芸術家はいらっしゃるんですか?」
慎吾はどこか嬉しそうに訊ねる。しかし、悠真は芸術作品などあまりよくわからない。すると範人が口を開いた。
「俺と彼はシャガールの大ファンなんだ。特に「愛しのベラ」という作品を見ていると、こんな風に誰かを心から愛せたらと思うよ。ね?」