疑心暗鬼〜特殊捜査チーム「零」〜

範人にそう訊ねられ、悠真も「そうですね！あの作品は素晴らしいです！」と相槌を打つが、シャガールという名前も作品も悠真は何も知らない。嘘をついていいのか、と冷や汗が流れた。

「確かに、シャガールの名画には恋人や結婚をモチーフにしたものが多く残されていますね。そしてシャガールはベラをひたむきに愛し、彼女が亡くなって再婚した後もベラに対する愛は彼がこの世を去るまで消えなかったそうですね。愛の画家と呼ばれるだけありますよ」

慎吾はそう言い、スマホをポケットにしまう。話をする気になったようだ。悠真は早速「事件があった時のことを教えてください」と言った。

「あの日、寝ていたら姉の悲鳴で目を覚ましました。リビングに行ったら父が倒れていました」

「何か物を盗られたとか、変わったことなどは？」

範人の質問に、「そう言えば、リビングの窓の網戸が外されて持ち去られていました」と範人たちを見つめながら慎吾は答える。範人は少し考えた後、言った。