疑心暗鬼〜特殊捜査チーム「零」〜
美月の言葉に悠真は黙る。確かにそうだ。過去に起きた犯罪でも、十代の少年や少女が凶悪事件を起こしてしまった例も少なくない。

「……そうか。人を殺したことが初めてじゃなかったから、致命傷を負わせることができたんだ」

範人の言葉が重くのしかかる。そう、悠真たちは最初から慎吾が怪しいと睨んでいたのだ。それは悠真が慎吾と話した時に感じた違和感から始まる。

人は過去を思い返す時、左上を見上げる仕草をする。しかし、慎吾は事件のことを話す時に淡々と真正面を向いていた。そして悠真は不思議に思ったのだ。

「大変!まだ動物殺害が起こってる。ニュースがまたやってるよ」

華の言葉が聞こえ、範人は「睦月くん、ネットニュースを!」と言い、慌てて悠真はスマホを取り出す。ネットニュースには猫のバラバラ遺体が発見されたと記事になっている。

「どうしてまだ動物殺害が起こっているんだろう……。また誰かが……?」

華の震えるような声に悠真と範人は顔を見合わせる。明日香は慎吾とは何の関係もない。しかし、次郎は慎吾の父親だ。
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