疑心暗鬼〜特殊捜査チーム「零」〜
慎吾はそう言い、大声で笑い出す。まるで狂ってしまったかのようだった。広人がどうするのかと目で訴え、悠真は手錠を取り出した。

「田村慎吾。二人の殺害容疑、そして殺人未遂の現行犯で逮捕する」

そう言い、悠真は慎吾に近づく。すると慎吾は「甘いよ」とスタンガンを捨てた。そしてポケットから折り畳み式のナイフを取り出して首に当てる。

「じゃあね」

そう言い、慎吾は自身の首を斬り付けようとする。悠真たちは顔を真っ青にし、慌てて止めようとするが誰よりも早く動いたのは範人だった。

範人は険しい表情をしたまま慎吾の手を掴み、ナイフを奪い取る。悠真はもちろん、慎吾も初めて驚いた顔を見せた。そんな慎吾の手を掴んだまま範人は言った。

「君に社会の常識や道徳が通用しないのはわかっている!夢を否定されて生きていく辛さもわかっている!それでも、人を殺していい理由にも、罪から逃げていい理由にもならない!!」

そう言う範人の顔は、何故か泣き出してしまいそうな表情で、悠真の胸が締め付けられる。

こうして、事件は幕を閉じた。
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