AIが決めた恋
「俺と彼女が?どんな噂だ?」
「2人が相思相愛なんじゃないかって。」

実際に『相思相愛』だとまでは言っていなかったが、似たような意味だ。

「そんなわけないだろ。」
「違うの?」

本当はこんなこと聞きたくない。でも、心の奥底に隠れている自分が、知りたいと叫んでいる。
僕は内心動揺していることを悟られないように、できるだけ真島くんと目を合わせないよう、テキパキと作業を進めた。

「ああ。俺と彼女は形だけの関係だからな。」
「形だけ…?」

どういう意味だろう。

「『AIが決めた相手』だという繋がりを持っているだけで、お互いにそれ以上は干渉しない。初めにそう約束したんだ。」

お互いに干渉しない。そんなのは実現できると思えない。パートナーになった時点で、その2人の間には、『AIが決めた相手』ということ以外にも、なんらかの意味を持つのだと思う。顔合わせやパートナー同士で行うミッション以外は干渉せずに他人行儀だなんて、そんなこと、できるとは考えられない。
実際、僕の目からは、真島くんと湖川さんは干渉し合っているように見える。

「でも、だったらどうして遊園地へ一緒に行くことにしたの?」

聞きようによっては、意地の悪い質問になってしまったかもしれない。でも、そのような意味で聞いたのではない。単純に、気になったのだ。

「俺も少しは努力しようと思ったんだよ。」
「努力?」
「少しは彼女のパートナーとして相応しくなれるよう、努力しているんだ。」
「それなら──」

それなら、お互いに干渉しないというのは、無理な話だと言おうとしたとき、体育館倉庫の扉の方から、“カチャリ”という音が聞こえた。
僕は息を飲む。

「真島くん、今、何か聞こえなかった?」
「扉の鍵を閉める音が聞こえた。」

僕は慌てて扉の方へ向かうと、強く扉を横に引っ張った。
しかし、いくら力を入れても、それはびくともしない。

「真島くん、これはまずいよ。」
「え?」
「閉じ込められた…。」
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