AIが決めた恋
「本当にそれでいいのか?」
「いいよ。」

いい。どうでもいい。自分のやりたいことも、興味のあることも、行きたい高校も、就きたい職業も、全てどうでもいい。
僕が意思を持てば、また母の機嫌が悪くなって、父と喧嘩する。

「蛍貴はやりたいことをやればいい。」
「やりたいことが無いんだから仕方ないでしょ。いつからこんなにぼーっとしている子になっちゃったんだろうね。隣の家の縣くんは、もっとハキハキしてる子なのに。」
「それはお前が蛍貴を押さえつけるようにして育ててきたからだろ!」
「は!?私の育て方に文句があるって言うわけ!?」

最悪だ。また喧嘩を初めてしまった。

「もういい。もう我慢の限界だ。」

父が席を立ち、書斎へ行くと、1枚の薄っぺらい紙を持って戻ってきた。

「もう終わりだ。離婚してくれ。」

心が悲しみで溢れる。それは、1番聞きたくなかった言葉だ。
いつか、また昔のように仲良くなれると思っていた。僕が、意思を失ったロボットになることで、また幸せな家庭を築けるのだと。でも、そんなものは幻想だったんだ。

「そんなの、急に言われても困るわよ。」
「だとしても、俺はもう出ていく。」

そう言うと、父は荷物をまとめ始めた。
きっと、出ていくと言ったのは、この場の雰囲気ではなくて、少し前から計画していたのだろう。離婚届も、父の欄は既に埋まっているし、荷物もほとんどまとまっていた。

「ちょっと──」
「蛍貴、外に来い。最後に話したいことがある。」

最後…。そんなこと、言わないで欲しい。僕だって急なことに頭と心がついてきていないのだから。
しかし、父は僕を待たずに、早足で玄関へと向かっていった。
僕も慌てて後を追いかける。
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