AIが決めた恋

結局、家を出たのは集合時刻の10分前だった。家から最寄り駅まで徒歩5分。十分間に合う時刻だ。
実は、子ども同士で何処かへ遊びに行くのは、これが人生で初めてだ。
中学時代は、友達と出かけることを母が絶対に許してくれなかった。
同じクラスの友達は、映画を見に行ったり、食事へ行ったりしている中、僕だけはいつも参加できず、ずっと疎外感を感じていた。
今日、このような経験ができるのも、父さんのおかげだ。そして、自分の意思で来ることを決めた。ほんの少しずつだけれど、僕は僕なりに変化できているのかもしれない。

「あ〜！蛍くん、おはよう！」

駅に着くと、もう皆は到着していた。そして、次々に『おはよう。』と声をかけてくれる。

「おはようございます。すみません、待ちましたか？」
「まだ集合の5分前だから大丈夫だよ〜。僕も含めて皆、早目に来ちゃったみたい。」
「それなら良かったです。」

学校とは違い、私服姿のクラスメイトはなんだかとても新鮮だ。と思ったが、よく考えてみれば、勉強会の時や遠足の時も私服であった。

「じゃあ、全員そろったわけだし、出発──」
「おっはよ〜！！」

裕さんが『出発』と言いかけた時、後方から走ってきた女の子が僕達の輪の中に入り込んだ。

「陽芽…！？」
「陽芽ちゃん…！？」
「陽芽さん…！？」

皆の声が重なった。