AIが決めた恋
僕達は、研究棟を出て、ぬいぐるみに似合うリボンを買いに行くことにした。
それにしても、ぬいぐるみに似合うリボンとは、どのような物だろう。自分の洋服もまともに選ぶことが難しい僕にとっては、心配がある。

「佐倉くん、先に謝っておかなければならない事があるのですが…。」
「どうしたの?」
「あの…、笑わないでくださいね…?」
「笑わないよ。」

湖川さんの歩行スピードが少し落ちた。表情が見たいが、(うつむ)いていて、よく分からない。

「私…、お、お裁縫(さいほう)が…全然できなくて…。だから、今日は迷惑を沢山かけてしまうかもしれません…。」
「そっか。」
「女子なのに、家庭科が苦手だなんて、ドン引きですよね…。」
「そんなことないよ。性別関係無く、誰にだって苦手なことはあるでしょ?」

『女子なのに』というワードに引っ掛かりを感じた。
遊園地へ行った時、湖川さんは昔、男子から、男だと揶揄(からか)われた経験があると聞いた。その時は、裕さんが励ましたそうだが、もしかしたら、まだ少しだけ引きずっているのかもしれない。

「佐倉くんはとても優しいから、そんなに優しくされたら、甘えが出てしまいそうです。気をつけます。」
「気をつけなくてもいいのに。」

甘えられたいと言ったら、気持ち悪がられてしまいそうだが、本当に僕を頼ってくれても良いのだということを伝えたい。
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