AIが決めた恋
「真島くん──」
「今日は俺に近づくな。」
「え…。」

彼はそのまま何事も無かったように、教室の扉を開いて、中に入った。
その瞬間、教室中がしんと静まり返った。
しかし、そんな教室の空気を1mmも気にしないような素振りで、真島くんは自分の席まで歩いていき、座った。
クラスの人はほとんど皆、真島くんに注目している。この感じからすると、噂はかなり広まってしまっていることが分かる。
近づくなとは言われたけれど、心配だ。この空気はきっと誰にも壊せな──

「うぃ〜〜〜っす!!!今日もイケメン本田様の登場だぜ!!」

突然、本田くんが、踊りながら教室へ入ってきた。

「おう、本田!おはよ!」
「おはヨーグルト!にかけるのはオリゴ糖!」
「何だよそれー。」
「俺が考えた新しい挨拶!イケてるだろ?」
「どこがだよ!ダッセーよ!」

その瞬間、教室の雰囲気が明るくなり、いつものような賑やかさに戻った。
本田くんがこれを意図的にやったとは思えないが、意図的であろうが、そうでなかろうが、取り敢えず、あのまま事が大きくならなくて良かった。
本田くんには、昔、罰ゲームで揶揄(からか)われそうになったことがあり、少し苦手意識を感じていたが、そこまで悪い人では無いのかもしれない。
私は自分の席に荷物を置くと、いつものように読書を始めた。
しかし、内容はほとんど頭の中には入ってこなかった。
『暴力事件』
この噂は、何処から流れてきたのか、そして、本当なのか嘘なのか、そればかりが気になってしまう。
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