AIが決めた恋
多目的室に到着すると、今日はいつも以上にしんとした空気が漂っていた。
原因は、真島くんを取り囲んでいた女子生徒達がいなくなったからだとすぐに分かった。

「今日は、動きをつけて演じてみようか!」
「はい。」

部長にそう言われ、一応返事はしてみたが、不安だ。まだ台詞もほとんど覚えていないというのに。

「じゃあ、最後のシーンをやってみよう王子が登場するシーンから、エンディングまでいきま〜す!」
「はい。」

まだ大道具などは用意されていないから、私はそのまま床に仰向けになって目を閉じた。
何だかとても恥ずかしい。こんなところを皆に見られるなんて、なかなかない経験だと思う。

「よーい、はい!」

部長が手を叩き、劇が始まった。

「なんて美しい姫なんだ。まるで眠っているようだ。今にも、目を覚ましそうなのに、死んでしまっているなんて…。」

真島くんが私の傍まで来る。
目は閉じているが、なんとなく声で距離感が分かる。
彼は今、一体どのような表情をしているのだろう。今日のことがあって、平常心で演技ができるとは思えない。

「小人さん。白雪姫に、お別れの…キスをさせてはくれないかい?」

キス…。
そういえば、このシーンはどう演じるのだろう。
今までは、読み合わせしかしていなかったから、分からない。
そんなことを考えているうちに、真島くんが私の頬に手を添えたのが分かった。
私は強く目を閉じる。
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