AIが決めた恋
「そう?それならいいけど…。まあ、こういう日は無理に練習しても良くないから、今日は白雪姫と小人のシーンをメインにやろうか。」
「でも、このシーンは最大の見せ場です。早いうちから練習を始めて、完璧に作り上げたいんです。」
「真島くん、そんなに焦らなくても良いんだよ。()えて練習をせずに、時間を置いてじっくり考えることも、演劇には必要なことだ。」
「…分かりました。」
「うん。分かってくれればいいんだ。じゃあ、これから王子の登場シーンは無いけど、今日はもう帰る?それとも、見ていく?」
「見ていきます。」

真島くんが答えると、部長は驚いたような表情をした。

「君は勉強熱心だね。やはり、相性1位のペアが君達で良かったよ。」
「ありがとうございます。」

真島くんはそう言うと、私の傍まで来て、耳打ちをした。

「今日は一緒に帰りたい。」
「へっ…。あ、はい。分かりました。」

いや、本当は分からない。真島くんの考えていることが、全く分からない。
『近づくな』と言ったり、かと思えば、『一緒に帰りたい』と言ったり。
一体、そこにはどのような意図があるのだろう。
相性が1位なのに、私はそれさえも分からないんだ。
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