AIが決めた恋

「佐倉くん！」

桃野さんの声で、我に返った。

「あ、ごめん。どうしたの？」
「いや、大丈夫かなと思って。今、まるで意識だけ異世界に飛んで行ったかのように、ぼーっとしていたから。」

異世界…。そんなに自分の世界に入り込んでしまっていたのか。

「少し、考え事をしていて。」
「そっか。」
「それで、僕が異世界に行っている間、桃野さんは僕に何かを言おうとしたのかな？」

冗談で『異世界』という言葉を使ってみたけど、つまらない僕が言っても全く面白くならず、言ったことを後悔した。そして、桃野さんも冗談に対して、何の反応も示さなかった。

「他の人達が解散しているみたいなので、私達も今日はそろそろ解散でも良いかなと思って。」

辺りを見回してみると、確かに沢山のペアが屋上を既に出ていた。

「そうだね。僕のつまらない話に付き合ってくれてありがとう。」
「いえ、そんな。私、ずっと誰かと藍ちゃんの話をしてみたかったの。だから、楽しかった。また、色んな話をしてもいいかな？」
「勿論。僕も色々なことを聞きたい。」

湖川さんのことだけじゃなくて。折角パートナーになったのだから、桃野さんのことも、少しずつ知ることができたら良い。

「じゃあ、また次の顔合わせの時に。」

そう言うと、桃野さんは屋上を出ていき、暫(しばら)くしてから僕も屋上を去った。