AIが決めた恋
「それ。」

私が黙っていると、隣から声が聞こえた。

「それ、俺が描いたんだけど。」
「へっ…真島くん…!?」

突然の真島くんの言動に私は驚いた。しかし、もっと驚いたことがある。真島くんのオーラの色が、どんどん薄くなっているのだ。

「ま、真島が描いたのか!?」
「でも、チラシ作りは女子だけのはずじゃ…!」

真島くんの堂々としている姿に驚いたのは、私だけではないようだった。男子達は今だに攻撃的な姿勢を見せているが、明らかに動揺しているのが見て分かる。おそらく、ほとんどの人が、真島くんの暴力事件を信じていて、警戒しているのだろうと思う。

「こういう滑稽(こっけい)な絵があっても良いかと思って、試しに描いてみたんだ。」

こ、滑稽って…。まあ、あながち間違いではないけれど…。

「でも!もし仮にそれが本当に真島の描いたチラシだっていうなら、湖川が描いたチラシは何処にあるっていうんだよ!見せてみろよ!」

これはまずい…。そのチラシを描いたのは、正真正銘私であり、他に私の描いたチラシなど存在しないのだ。もう駄目だ。佐倉くんの助けも失敗に終わったが、真島くんの助けも、失敗に終わる。
私は諦めて、本当のことを言うことにした。

「あの、そのチラシは、本当は私が──」
「彼女が描いたチラシなら、ここにある!」

真島くんが、自分の机の引き出しの中から、1枚の紙を取り出し、皆に見せつけた。
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