AIが決めた恋
「なあ、蛍貴!今日、一緒に帰らねえか?」
「何で僕と?陽芽さんと一緒じゃなくていいの?」
「それがさ〜、お陽芽がミスコンに出るんだけど、その活動?みたいなのがあるらしくて、一緒に帰れねえんだよ。」

ミスコン。そういえば今日、剣を振り回していた本田くんを陽芽さんが回収しに来た時、ミスコンがどうたらと言っていたような気もする。
そうか。陽芽さんはミスコンに出るのか。彼女が出るなら、優勝間違いないだろう。僕は生まれてから今まで、陽芽さん以上に顔の整った一般人を見たことがない。

「だから蛍貴!一緒に帰ろ?」

本田くんはノリノリでそう言っているが、正直僕はその気になれなかった。

「本音を言うとね、僕は今、君に対して怒っているんだよ。」
「え?怒ってる?何処が?」

本田くんが首を傾げる。
僕は怒ったことがほとんど無い。許せないことがあっても、大抵の事は黙って感情を無くして耐えてきた。だから、怒り方があまりよく分からない。
今もきっと、相手に怒っていることが伝わっていないだろうということは、分かっていた。

「何に怒ってるんだ?俺、何かお前に悪いことしたか?」
「自覚は無いんだね。」
「え??」
「数時間前のこと。喫茶店のチラシ。これだけヒントを出せば分かる?」

呆れ気味に言うと、本田くんは、ようやく僕が何に怒っているのか気がついたみたいだった。
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