AIが決めた恋
真島くんに右手を掴まれ、気がついたら、走り出していた。

「えっ…!」
「取り敢えず、逃げるぞ。」

真島くんはそれだけ言うと、学校の外まで走り続け、校門の前まで来た時に、やっと足を止めた。
掴まれていた右手が離れる。そして、息が切れる。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ。」

私は、息を整える。
しばらくして、息が整うと、なんとなく真島くんの方を見た。そして、目が合った。
あんなシーンを見てしまった直後だ。何を話せば良いのか分からない。

「あ、あの、今のは…。」

私の言葉を無視して、真島くんは、無言のまま、私の左頬に右手を添えた。
真っ直ぐな瞳で私を見つめているから、私も安易(あんい)に目を逸らすことができない。
きっと、こんなにも真島くんと目が合うことは初めてだ。
数秒間目が合い、真島くんの顔が、ゆっくりと近づいてくる。

「っ……!」

こ、これはまさか…。
キ、キ…スされるのだろうか…。そういえば、相性が1位だと判明した日…、
『俺が…するかもしれない…から。』
と言っていた…!
いや、落ち着け。そんなことがあるはずがない。でも…、この状態でキス以外にすることといったら、何があるだろう。
思考が上手く働いていないせいか、何も思いつかない。
全く心の準備ができていない。
しかし、真島くんの顔はどんどん近づいてきている。
3cm、2cm、1cm…
私は目を瞑った。
まさか、こんな形でファーストキスを迎えるなんて。
< 292 / 508 >

この作品をシェア

pagetop