AIが決めた恋
「あのさ、湖川。」
「何ですか?」

警戒心から、とても冷たい言い方になってしまった。

「あの…俺、謝りたくて。」

謝る…?

「この前のチラシのこと…。湖川のことをバカにしたような言い方をして、悪かった!」

本田くんがその場で土下座をした。
あまりにも突然のことに、私は慌ててしまう。

「ちょ、ちょっと…!」

周りの人がこちらをジロジロと凝視(ぎょうし)している。

「本田くん、あ、頭上げてくださいっ…!」

それでも(なお)、本田くんは頭を上げることがなかった。

「駄目だ!俺は本当に悪いことをしたんだから、湖川の気が済むまで…、湖川が許してくれるまで、俺はここで土下座を続ける!何時間でも、何日でも!!」

本田くんが、あまりにも大きい声で言うものだから、周りの人の目は次第に多くなっていった。
そして、中には、『何事?』や、『あの人、浮気でもしたの?』という言葉を発している人もいる。
私は、いても立ってもいられなくなって、本田くんに言った。

「もう、許しますから…!」

本田くんが、ぱっと顔を上げた。

「本当か!?」
「はい。気が済みました。許します。だから、もう土下座はやめてください。」

私がそう言うと、ようやく本田くんが立ち上がった。

「許してくれて、ありがとな。俺、湖川には入学した頃から、色々酷いことをしてたけど、それも全部許してくれるか…?」
「はい。許しますよ。」

ここで、許さないと言ったら、また何をされるか分からなかった為、私は許すことにした。それに、本田くんが十分反省していることも、彼の態度からよく分かった。

「マジか…!!ありがとう!お陽芽が天使だとしたら、湖川は女神だな!じゃあ、舞台頑張れよ!!」

本田くんは、よく分からないことを口にしすると、走っていってしまった。
なんとなく時計を見ると、1時45分を指していた。そろそろ衣装合わせが始まる。
結局外を散歩することはできなかったが、しかし、気持ちはとてもスッキリした。
そう思い、私は再び体育館へと戻った。
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