AIが決めた恋
「じゃあ、白雪姫の衣装に着替えてください。」

先程メイクをしてくださった先輩がそう言い、衣装を渡された。
私は近くに用意されている試着室のような個室に入り、着替えを始めた。
本番前の通し練習で、何度かこの衣装は着たことがあったが、メイクと合わせて着るのは、これが初めてだ。
白雪姫に見えなかったらどうしよう。
そもそも私は可愛くない。
『スカート脱げよ!』
男子からそう言われたこともある。
ああ、私が陽芽くらい可愛かったらな…。そうだったら、なんの躊躇(ためら)いもなく、この衣装を着ることができるのに。
衣装を着終わり、個室を出ると、先輩方がやってきた。

「湖川さん!可愛い!似合ってるよ!」
「本当ですか…?」
「うん!あ、あそこに真島くんもいるから、ちょっと並んでみてよ!」

先輩が指を差す方を見てみると、青い服に、赤いマントを付けている真島くんが立っていた。
その姿に圧倒される。元々身長が高く、スタイルが抜群なせいか、衣装がとても映えている。

「真島くん!湖川さんと並んでみてー!」

真島くんが振り返り、目が合った。
私は、昨日の帰り道での出来事を思い出してしまい、目を逸らす。

「に、似合ってますね…。」
「そうか?君の方が似合っていると思うが。」
「そんなことないです。」

きっと、お世辞で言ってくれているのだろう。私が、女の子らしい姿なんて、似合うわけがないんだから…。

「じゃあ、湖川さんと真島くんで写真撮ろうか。」

部長が言った。何やら本格的なカメラを持っている。

「はい!2人とも笑って〜。もっと!もっと笑顔!!うん、2人ともちょ〜っと引きつってるけど、新鮮味があっていいや。じゃあ、撮りま〜す。」

まるで、写真屋さんのようだ。

「-2e^(iπ)は??」
「「2。」」

真島くんと声がハモった瞬間、『パシャッ』という音がした。
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