AIが決めた恋
「そういえばお兄ちゃん、婚約はしたの?」

変に隠す必要もないと思い、私は単刀直入に聞いた。

「婚約?」
「ほら、あの高校って、ほとんどの人が卒業と同時にパートナーと婚約するんでしょ?」
「ああ。僕は卒業と同時にパートナーとの契約を破棄したから。だから今はフリーだ!」

お兄ちゃんは楽しそうにそう言った。

「契約破棄…!?」

確か、契約を破棄するには、お互いに話し合あって、納得することが必要だったはずだ。ということは、お兄ちゃんとそのパートナーの人は、お互いに契約破棄を受け入れたということになる。どちらから契約破棄を言い出したのだろう。それに、そもそもお兄ちゃんはどうして、あの高校に入ろうと思ったのだろう。お兄ちゃんは昔から女子から人気だった。特に目立った欠点も無い。普通に恋愛ができそうなのに。どうして…?

「あの、お兄ちゃんはどうして──」
「あ!!」

私が聞き終わる前に、お兄ちゃんが声を上げて、目の前の建物を指さした。

「あのお店、最近新しくできたってクラスの子が言ってた!ちょっと入ってみない?」
「あ、うん。」

お店のショーウィンドウには、今の季節に似合いそうな服が飾られている。どうやら、洋服屋みたいだ。

「スカート…。」
「藍?どうした?」
「ううん、なんでもない。」

洋服屋。
特に洋服に(こだわ)りがあるわけではない。しかし、洋服には、お兄ちゃんとの大切な思い出がある。
あれは確か、私が小学1年だった頃の夏休み。
お兄ちゃんが私にスカートをプレゼントしてくれたのだ。
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