AIが決めた恋
「絶対、俺のこと、好きにさせるから。」

予想外の言葉に、私は思わず目を開けた。
このシーンで、そんな台詞は無かったはずだ。それに、台詞にしては声が小さくて、きっと私にしか聞こえていない。
それなら、どうして彼はこんなことを…。
あれこれと考え、完全に固まっていた私を他所(よほ)に、彼は私に顔を近づけた。
そして次の瞬間、唇と唇が重なった。

「っ…!?」

私はパニックのに陥る。
彼は、完璧主義者なところがあるが、いくら完璧主義者だとはいえ、演技でここまでしてしまうなんて…!
私は慌てて起き上がる。

「ま、まあ!?私は一体、どうしてしまっていたのかしら…!?」
「ヤッター!白雪姫が起きた!!」

周りの小人役の先輩方が声を上げる。
私は真島くんの方を見ると、彼はとても余裕そうな表情をしていた。

「白雪姫、どうか僕と、結婚してください。」
「は、はい…。喜んで。」

そのまま、ハッピーエンドを知らせる音楽が体育館中に鳴り響き、段々と緞帳(どんちょう)が降りていく。客席からは、盛大な拍手が送られた。
そして、緞帳が完全に降りると、私達役者は、一列に並び直した。
並び終わったタイミングで、再び緞帳が上がり、客席からの拍手が沸き起こる。
一部からは歓声が上がっているが、そのほとんどが、真島くんに向けてのものだ。

「キャー!コウ様、格好良い〜〜〜!!!」
「私はコウ様のこと、最初から信じていましたよ〜!!」

皆、好き勝手言ってはいるが、取り敢えず、真島くんの噂は嘘だということが広まったみたいで、安心する。
そして、再び緞帳が降りると、私達の舞台は、完全に終了した。
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