AIが決めた恋
第1章 始まりは突然に

予感

新学期。
真新しい教科書に、真新しいノート。
身の回りの物が新しくなっただけで、やる気が湧いてくるのは何故だろう。
自分の席から窓の外を眺める。去年はどちらかというと廊下に近い席であったが、今年は、窓側から数えて2列目の席だ。しかも、1番後ろの席であり、また、人数の関係で、隣の席は空いているから、一人席だ。一人は嫌いではないし、実は中学の頃から一人席には憧れがあった。
窓の外を眺めると、中庭に生えている、大きな桜の木が美しかった。
僕はきっと春が好きなのだと思う。

「皆、進級おめでとう!」

4月。
僕達は無事、高校2年生になった。
この高校では、クラス替えが無いらしく、メンバーも去年と何も変わりない。教卓の前に立っているのも、去年と同じ先生だ。

「先生が今年も俺達の担任っスか?」

去年と変わらず、本田くんが何の遠慮もなく、先生に尋ねる。

「いや、実は担任は変わるんだ。寂しいなぁ、本田。」

1年経って、去年の担任の先生は、本田くんの扱い方を完全にマスターしたようだった。

「は?寂しくねーし。俺はもっと若くて綺麗な先生が良いんだよ。ってか担任じゃないのに、何でここにいるんスか?」
「今は、全員の職員が去年担当したクラスに入ってるんだよ。今から俺がこのクラスに最後の挨拶をした後、新しい担任の先生が教室へ入ってくる。」
「へえ。」

僕が中学の時までは、新学期の1番最初にある、学年集会で担任の先生が発表されていたから、このシステムは珍しいと感じてしまう。

「じゃあ、先生からの最後の挨拶だ。」

先生が改めて教室中を見渡した。
教室にしんとした空気が流れる。

「今までありがとう!今年からも頑張れ!」

最後の言葉にしては、簡単なものであったが、まあ、先生は転勤するわけでもないし、そこまで気持ちのこもった挨拶はいらないだろう。

「それでは諸君、また会ったら声かけてくれよ。」

先生は、そう言って、教室から出ていった。
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