AIが決めた恋
「私は、諦めたくない。」

彼女の顔から全ての感情が無くなってしまったかのような表情で、鋭い目付きをしたまま彼女は、何処か一点を凝視しているようだった。
彼女はそのまま、歩き出し、僕の左隣の席に着席した。
何だろう。分からないけれど、胸がざわついている。

「佐倉くんっていうんだね。よろしく。」

影石という女の子が、小声で囁いた。先程の無表情からは考えられないくらい、完成された笑顔だ。

「よろしく。」

僕が言うと、彼女は僕を真剣な眼差しで見つめた。
ころころと変化する表情に惑わされ、僕は何も言えなくなった。

「何だよ!蛍貴と転校生、見つめ合ってんじゃないかよお!」

教室の真ん中辺りの席で、本田くんが叫び、僕は慌てて目を逸らす。しかし、もう既に教室中の視線が僕達に集まってしまっていた。

「佐倉、まさかの一目惚れか〜!?」
「桃野に怒られるぞ!」
「二股すんなよな!」

お調子者の男子達が、口々に好き勝手なことを言う。
気になって、“彼女”の方を確認すると、彼女は興味が無さそうに、教室の外を眺めていた。
変な誤解を抱かれなければ良いと思う。何にせよ、僕はまだ、自分の気持ちすら伝えられていないのだから。

「はい、そこ、静かに。」

先生が、手を叩きながら、本田くん達を注意した。

「ちぇ。何だよ。今年の先生は、ノリ悪いなあ。」

本田くんはそんなことを呟いているが、正直、本田くんに合わせられるようになるのは、時間がかかるから仕方ない。
ここ数ヶ月は、また、本田くんの発言にヒヤヒヤしながら生活しなければならなくなりそうだ。

「それではこれで朝のHRを終わる。最後にお知らせだが、佐倉、桃野、影石は、放課後、職員室へくるように。それから…湖川もだ。」

新学期そうそう先生から呼び出しだとは。
思い当たることは一切無いが、もしかしたら、気づかないうちに何かをしでかしてしまったのかもしれない。
いや、でも…。
メンバーが気になる。どうして僕と桃野さんと影石さんと湖川さんなのだろう。
この4人に、共通点があるのだろうか。
今はまだ分からないが、何故か先程から、胸騒ぎがしてならないのだ。
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